ちよっとお茶しませんか? 〜気ままなコラム♪〜
手塩にかけて
何かの話の中で好きなオニギリの具について、ワイワイ言いあったことがある。
シーチキンや明太子、焼き肉などなど思い思いを好き勝手に話していた。
ニコニコと聞いているだけの友人がいて、話をふったところ、「私は梅干し」と、オニギリの原点ともいう具をあげた。
もちろん梅干しはおいしいけれど、数ある種類の中でなんとまぁオーソドックスな、と思った。なんで梅干し?
母の味がするから・・・彼女のお母様は数年前に亡くなられている。そのおかあさまが作り置きした梅干しがまだ甕にあるという。
お握りを作るたびに大切に大切にひとつづつ使っていて、まだあと数年は持つかもしれないとの事。
不覚にも涙がでてしまった。
手塩にかける、という言葉がある。語源は知らないが、その言葉を聞くと私はお握りを連想してしまう。
まだ夜が明けきらないうちから子どものためにお握りを作っているお母さんを思い浮かべる。
そもそもお握りは手に塩をつけてひとつひとつ握る母の愛情の代表作だと思う。
愛情ってそういう日常的なことの中にあふれていると思うので。
亡くなってもなお愛を伝え続けることができる、なんて優しいお母様かしら、と心をうたれてしまった。
甕の中の梅干しが最後のひとつになる時が少しでも先に延びるといいなぁ、と願っている。